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オイリュトミスト、アーティスト。ソフィア 教育芸術研究会 那須・奏身舎主宰●「癒す薬」としての「芸術」へ 海の幸、山の幸に恵まれた富山県に生まれ、立山連峰を見て育ちました。父方、母方の両祖父は、共に越中富山の薬売り。独特の漢方薬の匂いや古めかしいパッケージデザインが今でも脳裏に焼き付いています。「人を癒す芸術」をテーマにずっと芸術をやってきたのは、人を癒す薬を柳行李に入れて担ぎ、方々を渡り歩いていた祖父たちの存在があるのかもしれません。●上京して木彫人形「ヒトガタ」づくり音楽と美術が大好きで、進路を選ぶときにどちらに進むか迷いましたが、高校を卒業して上京し、東京学芸大学に入り、美術工芸科を先行しました。在学中に、NHKの人形劇『プリンプリン物語』の人形美術を担当された友永詔三氏に出会い、球体関節人形づくりを師事。大学の卒業制作では、前代未聞の等身大の球体関節人形を創り、卒業しました。その後、木彫、仏像彫刻家の故福本晴男氏との運命的な出会いにより、一木造りで女神や天使、マリア像などを独学で創作するようになりました。「聖なる人の形」「ヒトガタ」に、なぜか無性に惹かれていたんですね。●「美術教師時代」公立中での美術教師を勤めながら、制作を続け(当時は、美術準備室が私のアトリエ。授業のない週末は美術準備室でせっせと木彫の天使像などを作ってました。教室にも作品を飾り、(私物化?)癒しの場と化した美術準備室には、生徒たちがいつもたむろしていました。(多分、居心地が良かったんでしょうね)その時の可愛い生徒の中には、日本を代表する若手作家としてプロの画家になった子もいます。嬉しいことです!●八百屋でのチラシがもたらした「オイリュトミーとの出会い」画廊や個人美術館などで個展を開き、造形作家になるのか・・と思いきや、1990年、荻窪の八百屋に野菜を買いに行き、そこでたまたま手にとった一枚のチラシ(オイリュトミー公演のフライヤー)がきっかけで、人生が大きく転換します。まだ体験したこともないオイリュトミーを学ぼうと決意、教師を辞め、91年オイリュトミー・シューレ天使館(笠井叡氏主宰)に第1期生として入学しました。●シューレ卒業後、オイリュトミストとしてオイリュトミーとそのバックボーンであるシュタイナー人智学を学び、95年に卒業後、しばらく個展を開いたり、造形教室を開いたりしていましたが、シュタイナー関連の幼児施設、自主学校、フリースクール、ハンディを持つ子どものデイサービス、児童養護施設などで、オイリュトミーや芸術教育の仕事に携わるようになり、97年ごろから造形をやめて軸をオイリュトミーに転換しました。●声優さんとの出会い「言葉と音楽の接点」また、この頃に、声優さんやフリーアナウンサーの方との出会いが重なり、朗読劇に音楽をつけて演奏するという仕事をさせていただくようにもなりました。音楽は私にとって大切な大事な存在でしたが、それを仕事として依頼されたことで、言葉と音楽の接点について、より深く考えるようになりました。それは今でも私のオイリュトミーに大きな影響を及ぼしています。●言葉と音楽の間にあるもの。「和歌の文化」ハンディを持つ人や、幼い子どもたちは、オイリュトミーをするときに、歌をうたうように話したり、音楽的なものがベースにあると、とても心を開いてくれるのを実感し、意識的に、音楽的なものをベースに歌を使ったオイリュトミーレッスンをするようになりました。歌は原言語であり、母音が優勢な日本語は、言葉と音楽の間(あわい)にある言語かもしれません。特に古代はきっとそうだったと思います。なぜなら百人一首に見られる「和歌」の文化が残っているのですから。●東京から那須へオイリュトミー教師として、次第に活動の場を広げ、神奈川や群馬にも出向くようになったのですが、2006年に、思い切って東京を離れ、夫の安齋裕司がかつて住んでいた、縁のある那須へ移住することになり、生活環境ががらり変化しました。しかしまたまた、新たな出会いがありました。シュタイナーアートの第一人者で芸術療法家の吉澤明子氏と出会い、週末の子どもたちの芸術教育に共に携わることになったのです。子どもたちとそのお母さんたちの週末のクラスが誕生しましたが、公民館では、定期的に借りるのが難しく、また響きや雰囲気においても、色んな問題を感じていました。●オイリュトミーホール「那須・奏身舎」を建てる音の響きを大切にするオイリュトミーには、相応しい空間が必要です。子どもクラス、大人クラスの学びの場として、やはり拠点となる稽古場が必要だと思い、土地や大工さんを探し、オイリュトミーホール那須・奏身舎を思い切って建てました。2009年秋のことでした。それから11年経ち、今年2020年現在、奏身舎を拠点に、幼児から子ども、大人、ハンディのある人たち、また玉川村の児童養護施設の子どもたちに、オイリュトミーや音楽をベースにした芸術教育を行っています。●「痛みを持つ人たち」が教えてくれこと心身に痛みや障がいを持つ子ども、大人の方とのオイリュトミーは、私に多くの大切なことを教えてくれました。・体の動きの中にその人の内面が全て現れること。・どんな人も、聖なるものを、真善美を求めていること。・音楽、音楽的なものが内面への扉を開き、人間は本来音楽家として生まれついている、とのシュタイナーの言葉が本当であったこと。・破壊的に見える表面の言葉の裏に、より良いものを志向する魂の声が潜んでいること。などなど。●「言葉や音楽の源流に触れる体験」それはオイリュトミー困難を抱く方達にこそ、言葉や音楽の源流に触れる体験が必要なのではないかと感じています。言葉の発音体感と身体感覚を結びつけるオイリュトミーは、ふさわしい形で為されると、困難を抱く人たちの心の奥にも伝わる力を持っています。そして繰り返しを通して、内面から治癒する力が働きかけるのです。●一番近くて一番遠いものとしての「言葉と音楽」オイリュトミーは大きな可能性を持つ芸術ですが、まだまだ認知度が低いのも事実です。自分自身、まだまだ学びの途上にありますが、より多くの方に、言葉や音楽の隠された力、素晴らしさ、そしてオイリュトミー芸術を知って体験していただけますように。このブログがオイリュトミーの世界を開く扉となれたら、この上なく幸いです。お読み頂き、ありがとうございました。
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