成功道〜監督 潮音 勉のSuccess road

　東洋一の繁栄を誇り、モダンの代名詞となった都市、上海。
　かつて、その上海が、東洋のパリと言われていた頃。

　曾祖父の商社は、海外向けの天然原料を生産、製品の７割のシェアを占めていたプロダクト事業の成功によって、当時の大商社の鈴木商店などと取引するなど、大きな財を成した。

　その元で育った祖父は今で言うところのセレブで、当時としては大変高価だったバイオリンを弾くなど、ブルジョアな生活を送っていた。
　劇団を主宰し自ら書いた脚本により興行を行い、詩、小説、短歌、俳句などの文芸に秀で全国誌に掲載されるなど、将来を嘱望されていた。

　しかし、よくあるように、才能と引き換えに若くして夭折した。

　その後、安価な化学原料の開発で、扱っていた高価な天然原料が時代の急激な変化で不用になるといった、産業の斜陽化に伴い、曾祖父の商社も事業規模を急激に小さくしていった。

　家の押し入れに貼られていた、祖父の数々のトロフィーや賞状も今は無い。

　昭和４０年代、こうした先祖のルーツのもと生まれた私は、
　近所の商店街のガキ大将や大勢の子どもたちと、
　茜色に大空を染める大群のトンボを観ながら、
　屈託なくあたりを走り回り遊んでいた。

先祖の残していた、家の片隅に眠る
『古くて大きな算盤』の存在を知らずに…。

　祖父に先立たれた曾祖父も、その後無くなり、
祖母が細々と営んでいた小さな商店であったが、
会社員となり、雇われの身となった父が
郊外に家を建てるとともに、完全にたたんでしまった。

　こうして、
　私の血潮には、「経営」と「芸術」の

　この２つの血が引き継がれている。
　
　どちらも、本当の意味で、クリエーション、すなわち創造が必要だ。

　ある組織に就職した私は２０代後半に都市計画に携わっていた。
　
　情報収集と未来予測を行った結果、日本の人口構造が激変することをいち早く知り、ステークホルダーとその構造改革のために、渡米した。

　海外から輸入したその事業分野の提案で新たな産業創造を行い、
人口減少下においての産業活性化を日本にという考えだった。

　その新しい道は、瞬く間にブームとなり、気が付くと、TV、新聞、
フォーラムなどに出演、ブームを創り、自らその最先端に立っていた。

　ある時を境に、その最前線から離れることになった。
　後進育成のために道を譲ることにした。

　　今、私は、先祖の辿った数奇な運命を思いながら、

　成功道へまた戻ることを強く決意し、

　フリーエージェント宣言する。

　フリーエージェントは、きっと
　２１世紀初頭の日本を牽引する存在となるだろう。

　リターン・オブ・ザ・先祖のジダイ。　潮音 勉。