いつか見た風景
まだ幼い3歳位の坊やとその弟の1歳くらいの坊やが小さな家の居間の脇にある階段に隠れ、震えながらおびえていた。その坊やたちの両親が小さな家から近所に響き渡るほどの怒声でケンカを始めた。つかみ合い、物が投げつけられ壊れ、その身を守ろうと本能的に小さな坊やたちは咄嗟に階段へ非難した。ふと兄の方の坊やが、一緒に抱きかかえていた弟の坊やの方をおそるおそる見ると、まだ訳が分からなかったのだろう、ただ無邪気に笑っていた。それを見た兄の坊やは「地獄や」咄嗟にそう吐いた。3歳で地獄という言葉が分かっていたのかは分からないが、突如、感情と共にその言葉がほとばしった。
母親の方が身の危険を感じたのだろうか、坊やたちのそばを気付くことなく、猛烈な勢いで階段を駆け上り逃げた。夫は鬼の形相でそれを追いかけ、二階でドスン、バタンとしばらく続いた。
今から40年近く前のいつか見た風景。私はこの坊やたちを必ず救ってやりたい、見捨てたくない、そんな気持ちでいっぱいです。