いらっしゃいませ〜。
ここにあるのは、
想像とそのダイナミックな展開によって生じる妄想
感覚と直感
そしてそれに伴う文字の前進と後退。
「人々はかくも必然的に気狂いであるので、
気狂いでないとは、狂気の別のひと巡りにおいて、気狂いであることである」
パスカル
いいことは長続きしないものだ、とかれは思った。これが夢だったらよかったのに、いまとなってはそう思う、魚なんか釣れないほうがよかった。そしてひとりベッドで新聞紙の上に寝ころがっていたほうがずっとましだった。
「けれど、人間は負けるように造られてはいないんだ。」とかれは声に出していった、
「そりゃ、人間は殺されるかもしれない、けれど負けはしないんだぞ」それにしても、かわいそうなことをした、おれは魚を殺してしまったんだ、と彼は心のうちで考えた。
『老人と海』ヘミングウェイ 著 福田恒存 訳 (新潮文庫)より抜粋
…(略)…突然ですが。私なんかこのごろは毎日ブリブリ憤ってばかりいます。何もしゃくにさはる筈がさっぱりないのですがどうした訳やらひとのぼんやりした顔を見ると、「ええぐづぐづするない。」いかりがかっと燃えて身体は酒精に入った様な気がします。机へ座って誰かの物を言ふのを思ひだしながら急に身体全体で机をなぐりつけさうになります。いかりは赤くみえます。あまり強いときはいかりは気持ちが悪くありません。関さんがああおこるのも尤もです。私は殆ど狂人にもなりさうなこの発作を機械的にその本当の名称で呼び出し手を合わせます。人間の世界の修羅の成仏。…(略)…
『宮沢賢治全集 9』 ちくま文庫