~日和はどんな天気~ 日本語には、行楽日和,運動会日和や洗濯日和など「~日和」という言葉があります。この日和には、その事をするのに都合のよい天気という意味があります。また、日和申し・・・長雨の際、天気がよくなるように神に祈ること,日和待ち・・・航海に適した天気や風を得るため港に停泊し待機すること、といった言葉もあります。この場合の日和には、晴れていること,天気のいいことや、船の航海によい天気,船出によい天気という意味があります。日和とは、どのような大気現象なのかを考えてみたいと思います。
よい天気には晴れる要素が必要です。高気圧に覆われている状況が考えられます。そして行楽日和や運動会日和等からスポーツ等屋外で体を動かしても快適な状態である要素も必要です。夏の太平洋高気圧や冬のシベリア高気圧に覆われても凄く暑かったり寒かったりしますので、これらの高気圧ではありません。気温が18~20℃,湿度が40~70%で風が0.5m/秒ぐらいの大気状態と考えられ、五月がほぼこの条件にあてはまり最も快適な気候と言われています。ただ、五月晴れの空は白っぽく見えることが多くあります。夏に向かって気温が上がっていく五月は日射が強いため対流が盛んで、塵や埃が空に浮かんでいます。雨が少ない冬の後で草も少ないため塵が舞い上がりやすくなっています。また、空気中に大きな水滴や塵等が多いときは、太陽光の中で波長の長い赤等が散乱を起こし白っぽく見えます。一方、秋は日が短くなり地面が冷え込んでいくため大気の状態が安定し風の乱れも少ない、また台風期の後で地面が湿っていて塵も立ちにくい。水滴や塵が少ない秋の空では、波長の短い青や紫の太陽光が空気の分子にあたって散乱するため空は青くみえます。このため秋の空は比較的澄んでいます。気候的に最適な条件の五月晴れや青く澄んださわやかな秋晴れが「日和」ではないかと考えられます。では日和をもたらす高気圧とはどんな大気現象なのかを考えてみたいと思います。
春の終わり,初夏や台風期の後の秋に日本を覆う高気圧は、移動性高気圧です。移動性高気圧は温帯低気圧と対をなし上空の偏西風と連動し形成されていきます。偏西風は南北にうねり、波の形を描きながらほぼ西から東へ進みます。これに伴い移動性高気圧も東進します。温帯低気圧が来た後は移動性高気圧がやってきて、また温帯低気圧がやって来るといったように、移動性高気圧と温帯低気圧が交互にやって来ます。春や秋に晴れの日や曇りや雨の日が周期的に変化するのはこのためです。波形の山の部分が気圧の尾根(リッジ)、谷の部分が気圧の谷(トラフ)と呼ばれています。移動性高気圧は上空のリッジからトラフの間に形成され、温帯低気圧はトラフからリッジの間に形成されます。東西をx軸とし、x軸方向に進む波動は、y(x,t)=ASinκ(x-λ/T*t)で記述されます。北緯45°付近で、波長λ=4,000kmの波が七つ(波数κ=7)で構成されており、地球を一周する28,000kmの偏西風波動があると仮定し、振幅A=1,000km、周期T=100時間(約4日)とおくと40km/時間で東へ進みますので、春や秋の日本上空の偏西風波動が、かなりおおざっぱですが描けます。適当に数値をあてはめましたが、偏西風波動の伝搬の特徴は波長に依存しています。渦度方程式∂ζg/∂t=-υg*∇ζg-vgβ-f0(∂ua/∂x+∂va/∂y)を使い考えると、偏西風波動が東進するにはトラフ前面で∂ζg/∂t>0後面で∂ζg/∂t<0となる必要があります。波長が短ければ(3,000~4,000km)ζgの東西傾度が大きく、地衡風υgによる地衡風渦度ζgの移流である-υg*∇ζgの項が卓越し、トラフ前面で南風,後面で北風となり、波動は東進します。波長が非常に長ければ(10,000km以上)地球自転に原因する渦度の地衡風による移流である-vgβの効果がまさり波動は西進します(地球を覆う空気が止まっていて、中身の地球が自転しているため、地球上からみると空気が西に動いているように見える感じ)。温帯低気圧や移動性高気圧の移動や発達を調べるためには、ジオポテンシャルΦ(重力の位置エネルギー)の時間変化を調べる必要があります。傾向方程式[∇^2+∂/∂p(f0^2/σ*∂/∂p)]∂Φ/∂t=-f0υg*∇(1/f0∇^2Φ+f)-∂p[-f0^2*υg*∇(-∂Φ/∂p)]を使い考えると、第1項の効果は波動を伝搬させるのみの作用です。第2項(温度移流のp微分)は事実上、下層の温度移流によって決定されます。移動性高気圧が発達するためには、運動エネルギーを有効位置エネルギーに変換する大気の動きが必要です。つまり渦管が西に傾き、地上高気圧の中心の前面で寒気の移流と下降,後面で暖気の移流と上昇が起こることが必要となります。また寒気軸が地上高気圧中心と上空のトラフの中心に結びつき東に傾いていることが必要です(温帯低気圧についてはほぼ逆の現象が起きる)。リッジで∂Φ/∂t∝∂/∂p[-υg*∇(-∂Φ/∂p)]>0、トラフで∂Φ/∂t∝∂/∂p[-υg*∇(-∂Φ/∂p)]<0であれば、偏西風波動は発達する(または発達中である)ことを意味している。もし先ほどの式の符号が逆であれば、波動の振幅は減少する(波動は衰弱する)ことを意味します。【参考引用図書 新NHK「気象ハンドブック」 NHK文化研究所編 NHK出版 気象予報の物理学 二宮洸三著 オーム社】