膠原病・皮膚筋炎・多発性筋炎を知ってもらいたくて
①膠原病って?
全身のコラーゲン(膠)にフィブリノイド変性(病理組織学的に強い好酸性と屈折性を示す均一な構造物)が見られ、全身の関節・血管・内臓などに障害を起こす[1]一連の疾患群の総称として1942年に定義された。
のちに、コラーゲンの変性が病態の本質ではないことが明らかになり、膠原病という名称が不適切であるということで、結合組織病(けつごうそしきびょう)とも呼ばれるようになったが、日本では膠原病の名称で呼ばれることが多い。
原因としては体内の血液中の抗体が自己の細胞の核などと反応して免疫複合体を作り組織に沈着したり、組織を攻撃することで発病すると考えられている。死亡に至る場合もある。
典型的には主症状として発熱・倦怠感・関節痛・レイノー現象などがあげられる。慢性に経過し、寛解と再燃を繰り返しながら進行することがある。多くの場合に自己免疫疾患としての機序が関与していると考えられているが、完全な病態の解明はなされていない。
☆古典的膠原病
全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus; SLE)
全身性硬化症(systemic sclerosis; SSc)(全身性強皮症、進行性全身性硬化症(progressive systemic sclerosis; PSS)ともいう)
皮膚筋炎(dermatomyositis complex; DM)←はむはむはここ
多発性筋炎(polymyositis; PMS)
関節リウマチ(rheumatoid ahthritis; RA)
結節性多発性動脈炎(polyarteritis nodosa; PN)
混合性結合組織病(mixed connective tissue disease; MCTD)
その他の膠原病・膠原病類縁疾患
シェーグレン症候群(Sjögren syndrome; SjS)
顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangitis; MPA)
Wegener肉芽腫症(Wegener's granulomatosis; WG)
アレルギー性肉芽腫性血管炎(allergic granulomatous angitis; AGA)(チャーグ・ストラウス症候群(Churg-Strauss syndrome; CSS)ともいう)
過敏性血管炎(hypersensitivity angiitis)
ベーチェット病(Behcet's syndrome[disease])
コーガン症候群(Cogan's syndrome)
RS3PE(remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema)
側頭動脈炎(temporal arteritis; TA)
成人スティル病(adult-onset Still's disease; AOSD)
リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica; PMR)
線維筋痛症(fibromyalgia syndrome; FMS)
なお、リウマチ熱(RF)については古典的膠原病に分類されていたが、原因が判明したため、現在は膠原病から外されている。
☆特異的抗体
膠原病では抗核抗体(ANA)が非常に有名である。しかし抗核抗体が陽性であったとしても臨床的意義がないものが殆どであり膠原病、甲状腺疾患、慢性肝炎といった臨床的意義があるばあいはごく僅かである。また膠原病の中にも抗核抗体が診断に影響しないものがある。
☆ANA関連膠原病
全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性硬化症(SSc)、シェーグレン症候群(SjS)、皮膚筋炎(DM)、多発性筋炎(PMS)、混合性結合組織疾患(MCTD)があげられる。これらの疾患はSLE以外は特異的な症状があり、抗核抗体を測る前にそれらの症状の有無を確認しなければ、検査結果の判断は難しくなる。例えば、SScならば皮膚硬化、SjSならば乾燥症状、皮膚筋炎、PMSならばゴットロン徴候、ヘリオトロープ疹、筋力低下、MCTDならば、ソーセージ指やレイノー症状があげられる。抗核抗体の特異性が高いとされているのはSLE、SSc、MCTDである。特異的抗体としてはSLEにおける抗dsDNA抗体、抗Sm抗体、SScにおける抗Scl抗体、抗セントロメア抗体、MTCDにおける抗U1RNP抗体、SjSにおける抗SS-A抗体、抗SS-B抗体、DM、PMSにおける抗Jo-1抗体などがあげられる。上記特異的な症状がなく、抗核抗体を測るような場合とは、特異的な症状を示さない膠原病を疑う時であり、それは通常はSLEのことになる。SLEは発症時には特異的症状に欠けるのが特徴である。SLEの診断にはSLEの分類基準(感度96%、特異度96%)を用いるのが一般的である。SLEの分類基準は11の項目からなり4つ以上を満たすとSLEとなる。抗体以外の項目で9つの項目があるため、そのなかで最低2つの項目に合致しなければ抗核抗体を測定しても診断的な意義はない。すなわち、関節炎、漿膜炎、痙攣、精神病、血球減少、持続性蛋白尿、円柱、皮疹(蝶形紅斑、ディスコイド疹)、無痛性口腔内潰瘍(口腔上部に多い)のうち2つ以上認められるとき、抗核抗体、抗dsDNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体を特定する意義が生まれる。このような使い方をしていればSLEを強く疑う時、あるいはSLEを否定したいときに抗核抗体は強い武器となる。
☆ANA陰性の膠原病
抗核抗体が診断に影響しない膠原病としては血管炎、血清反応陰性脊椎炎、関節リウマチ、リウマチ性多発筋痛症、ベーチェット病、成人スティル病などがあげられる。これらの疾患では抗核抗体が診断に影響しないだけであって、抗核抗体が陰性でなければならないわけではない。健常者でも抗核抗体が陽性となるように、これらの疾患の患者でも抗核抗体が陽性となる場合は多々ある。
☆ANCA関連血管炎
顕微鏡的多発血管炎(MPA)、アレルギー性肉芽腫性血管炎(AGA)、ウェゲナー肉芽腫症(WG)があげられる。抗好中球細胞質抗体(ANCA)を測るのはMPA、WG、AGAを疑ったときであるため、急性ないし慢性の腎障害、持続性蛋白尿、原因のはっきりしない肺陰影、喀血、紫斑、多発性単神経炎、鼻中隔穿孔を認めたら測定する。血清における陽性率はAGAで50%、WGの活動期で90%、MPAで70%であるためANCA陰性であってもANCA関連血管炎の可能性を否定はできない。腎生検などによる免疫染色は若干陽性率が上がる傾向がある。
☆責任細胞と治療方針
2010年現在までに有効な治療法は見つかっておらず、現在の日本の最新医療技術をもってしても完全に治す事は不可能だと言われている。ただ、ステロイドや消炎剤などを使用することにより炎症がある程度抑制され、日常生活に支障のない程度にコントロールすることは可能。最近では漢方薬などを用いた治療法もあり、ステロイドだけでは制御できない症状に対する追加療法、および別の手段として取られる。
いくつかの膠原病はどの免疫細胞の異常が病態の本質か検討されており、特異的な治療によって大幅にマネジメントが変わりつつある。例えば、SLEやシェーグレン症候群はB細胞の異常と認識されており、B細胞を特異的に傷害するリツキシマブによって治療が可能になりつつある。
☆責任細胞 疾患
好酸球 チャーグストラウス症候群
CD8陽性T細胞 多発性筋炎
CD4陽性T細胞 皮膚筋炎
B細胞 SLE、シェーグレン症候群
マクロファージ ウェゲナー肉芽腫
好中球 MPA、ベーチェット病
筋線維芽細胞 全身性硬化症
これはステロイドへの反応性にも関係しており、マクロファージ、好中球、筋線維芽細胞を責任細胞とする疾患はステロイドへの反応性も悪い。
②はむはむの病気って?
皮膚筋炎(ひふきんえん、Dermatomyositis; DM)は自己免疫疾患の一種である。慢性疾患であり、膠原病の1つとして分類されている。横紋筋が冒される特発性炎症性筋疾患の一つであり、他には多発筋炎(PM)がある。両者は皮膚症状の有無によって区別されるが、そもそも基本的に疾患が異なるとする考えもある。なお、略称のDMは糖尿病と共通しており、また糖尿病のほうが有名であるため、うかつに略称で話すと勘違いされる可能性がある。
年間発病率は100万人あたり2~10人という比較的まれな疾患である。他の膠原病の例に漏れず女性の発病率が高く、約2.5倍かかりやすいとされる。発症年齢のピークは5~15歳と40~50歳の二極性を示している。男性の場合は難治で、かつ悪性腫瘍合併例の可能性が高い。
詳しいことはわかっていないが、自己免疫による筋障害であると想定されている。橋本病、バセドウ病や他の膠原病など自己免疫疾患に伴って発症すること、自己抗体を伴うことがあることがその理由とされている。血管周囲にCD4+T細胞やB細胞が存在することから、液性免疫が関係すると考えられている。
皮膚筋炎の名の通り、皮膚と筋に典型的な症状が見られる。最近では、筋症状がほとんど見られないにもかかわらず特徴的な皮膚症状がある、筋症状を伴わない皮膚筋炎という疾患概念も加えられている。
☆皮膚症状
ヘリオトロープ疹('heliotrope eyelids' or 'heliotrope rash')とゴットロン徴候(Gottron's papule)と呼ばれる典型的な紅斑が見られる。ヘリオトロープ疹は上眼瞼(まぶた)に見られる紅斑を、Gottron徴候は手指関節背側面(手の甲)の角質増殖や皮膚萎縮を伴う紫紅色紅斑を指す。ヘリオトロープとは、紫色をした西洋のハーブの名で、色が似ていることからとった。
一方、手指先端指腹の裂溝を伴う角質化はmechanic's hand(逆Gottron徴候)と呼ばれる。この兆候は間質性肺炎合併と相関する。
また、手足の伸側には、多形皮膚萎縮症poikilodermaといって、色素沈着、脱失、萎縮が混在した局面を呈することがある。 爪郭の血管拡張・点状出血もみられることがある。
☆筋症状
筋力の低下が見られる。体幹に近い骨格筋が対称的に冒される。
通常、朝起きたとき体を起こしづらいというのが最初の症状である。このときは、これが病気であるということを認識することは少なく、いつもより疲れやすいくらいに感じるものである。しだいに筋力低下は進行し、重いものを持ち上げられなくなったり、普通に軽いものも持ち上げられなくなり、歩行することも困難となって、ついには起き上がることもできない寝たきりの状態となる。
☆全身症状
全身倦怠感が見られる。発熱はあまりない。
はむはむの場合40度前後の高熱
☆その他の症状
関節炎
関節リウマチに似た部位に関節痛を生じるが、明らかな滑膜炎ではなく他覚所見はあまりない。
☆肺炎
40~50%に間質性肺炎が生じるほか、のどの筋力が低下することにより誤嚥性肺炎を発症しやすい。間質性肺炎が急速に生じた場合、治療抵抗性で予後不良である。筋症状を伴わない皮膚筋炎と間質性肺炎が合併しやすいとされる。
☆悪性腫瘍
これは症状というより、悪性腫瘍があると腫瘍随伴症候群として皮膚筋炎を発症するのである。原因となる悪性腫瘍は、日本では胃癌が原因であることが多く、欧米では大腸癌が多い。一般に、消化管癌に合併し、最多のものはその地域で最多であるというだけの話である。悪性腫瘍の合併例では、腫瘍を治療すると筋炎の症状も改善することが知られている。
筋が冒されることから、筋の異常を調べる検査が主に行われる。また、他の膠原病と同様自己抗体の検査もされる。
☆検尿
蛋白尿の出現は、膠原病による血管炎の存在を示唆する。
血液検査
クレアチンキナーゼ(CPK)、GOT(AST)の上昇がみられる。この所見がないならそれは皮膚筋炎ではないか、またはAmyopathic Dermatomyositis(日本語で言うならば筋症状なき皮膚筋炎)であり、重篤な肺疾患を起こしやすい予後不良の疾患である。
筋電図
筋原性変化をみる。神経原性であれば、筋力低下の原因は他の疾患である(筋萎縮性側索硬化症など)。
☆筋生検←痛いよ(・∀・)
さまざまな筋線維の壊死と再生がみられ、局所にはCD8+T細胞とマクロファージがみられる。これは特に封入体筋炎(細胞内封入体がみられる)との鑑別として重要なのだが、感度が低い検査である(なにもないところをとってくることが案外多い)。皮膚筋炎では多発筋炎と比較して、血管周囲にCD4+T細胞の浸潤が見られる。多発筋炎では、炎症の主座は筋肉に限定される。
☆自己抗体
抗Jo-1抗体は、きわめて特異度が高いがどちらかというと多発筋炎でよく(でもないが)みられる。
☆MRI
STIR画像にて筋肉の炎症所見が手に取るようにわかる。筋生検の部位を決める際にも有用な情報となる。筋炎が改善すれば、MRI上の炎症所見も鮮やかに改善するので、治療効果の評価にも有用である。ステロイドミオパシーとの鑑別も可能と考えられている。
☆PET
まだ報告は少ないが、実際の画像を見れば明らかにMRIよりもさらに高精度に筋肉の炎症を見ることができる。3D-PET画像においては全身の筋肉が映し出され、あたかも解剖学アトラスのようである。筋炎が改善すれば、筋肉は見えなくなる。PET-CTならなおさら美しく、炎症をおこしている筋肉の名前を特定できる。
☆診断
1977年に発表されたボアンとピーターの診断基準を用いることが多い。
1.対称性近位筋の筋力低下
2.筋生検による筋炎の存在確認
3.血中筋酵素の上昇
4.筋原性の筋電図変化
5.皮膚筋炎の典型的皮疹
皮膚筋炎の診断には5は必須項目であり、その上で1〜4のうち3〜4項目で確定、2項目で疑いが強い、1項目で可能性ありとなる。
☆治療
基本的にはステロイドを中心として免疫抑制剤を組み合わせて投与する。ステロイドは最も一般的かつ有効な治療法であり、通常1日3回に分割して投与する。効果が薄ければステロイドパルス療法が試みられる。しかし副作用が強く、特に間質性肺炎が問題となる。免疫抑制剤としてはシクロフォスファミド,サイクロスポリン,メトトレキサートやアザチオプリンが用いられる。筋症状による筋力低下が著しい場合はリハビリテーションも並行して行われる。 リツキシマブ も有望である。