≪口だけで、描く男。≫脊髄損傷で寝たきり。
首から下がまったく動かない。
それでも、
プロの絵描きになることを本気で目指している。
製本職人の祖父の影響で
紙とペンを玩具に幼い頃を過ごす。
言葉より先に絵を描く事を覚えた。
絵を描く事は日常の一部で
欠かす事の出来ない大切な事だった。
幼い頃に父を亡くし、
それ以来、
不安定な精神状態を
落ち着かせるのも絵を描く事だった。
高校生の頃にドロップアウトする。
その間も精神を安定させるために
ただひたすら描き続けた。
しかし、数年後に社会的に復帰してからは
絵に対して真摯に向き合うことが出来なくなった。
描かないままそのうちに
いつか描けるようになるだろう、
またその時に描けばいいと思いながら
大学生活を過ごしていた。
21歳の春、絵と同じくらい自分とって大切で、
生活の中心になっていた
スノーボードの事故で首の骨を骨折し、
脊髄損傷で首から下の体の自由を失う。
いつでも描けるだろうと思っていた絵を描く事が
本当に出来なくなってしまった。
筆を口にくわえて絵を描いている
作家が何人もいるのは知ってはいたが、
もう動く事が出来ないと認る勇気が無く
自分は筆をくわえる事は出来なかった。
寝たきりになってから全く描けないでいたが
最近になって描く事に対する欲求には勝てないと感じ
口だけでPCを操作し描き始めた。
今思う事、『なぜ描ける時に思う存分描かなかったのか。』