
部長A氏(岸部一徳)の心の声
昨日の晩、飲み屋の後ろの席で誰かがリクシルとかいうものの話をしていたのを思い出した。
なんとなく聞こえてしまったのだ。
でも、なんとなくしか聞こえなかった。
目の前に部下(堤真一)がいる。
彼は、正直私よりまじめで優秀だ。私は、こうしてスポーツ新聞を読んでいるが、彼は、書類を書いている。きっと、私より出世するだろう。
くやしい、くやしいが、彼ならそのリクシルとやらを知っているかもしれない。
聞いてみようか…。
部長、知らないんですか!なんて言われないだろうか…。
心配だ、心配だが…
「おい君、リクシルって知ってるか?」
課長代理B氏(堤真一)の心の声
今朝、部長から尋ねられたリクシルとかいうもの。
恥ずかしいことに私は知らなかった。訪ねてきた部長もよく知らなかった。
なんだろう?
この落ち着かないのは世代のせいだろうか。
もしかして若い連中には当たり前の言葉なのかもしれない。
目の前に後輩がいる。未だに独身で遊びも盛んらしい。
こいつなら知っているかもしれない。
いや、こういうヤツがよく使う言葉なのかもしれない。
聞いてみようか。
「どうしたんですか急にリクシルなんて」
そんな好奇な目で見られたりしないだろうか…。
「おまえ、リクシル知ってるか?」
主任C氏(大森南朋)の心の声
このバーに通い始めて半年。
それにしてもなんて隙のないバーテンだ。
これだけ足繁く通ってるんだ、彼女は俺の気持ちだって薄々
いやはっきりわかっているはずだ。
どんな時でも笑顔でうまく逃げていく。
オレとしたことが。オレは君の違う顔が知りたいんだ。
何かないか、そう言えば昼間課長代理がリクシルとか何とか言っていた。
オレは知らない。今のところ興味もない。
でも、これは好都合じゃないか。
彼女は知っているだろうか。
知っていれば聞き出せばいい。知らなければ…
なんにせよ話はつながるだろう。
リクシル…
いい感じの言葉だったら、もしかしたら、
今日は…
「あのさ、リクシルって知ってる?」
バーテンダーD嬢(松下奈緒)の心の声
髪を切った。
別に失恋はしていない。
わたしはそんなことで翻弄される女じゃないし、だいたい男に困ったこと
なんて、正直今まで一度もなかった。
この間の常連客も、回りくどいやり方でずいぶん長い間、わたしを
口説いてくる。
可能性なんて1%もないのに、お気の毒。
でも、あの客が訪ねてきたリクシル、あれだけはちょっと、気になる。
食いついてその気になられたら面倒だから興味ないふりをしていたけど、
なんだろう、リクシル。
この美容師は、知ってるだろうか?
こんな男が、知っているわけないか。
わたしから切り出したら、逆にわたしが彼に興味を持ってろなんて
勘違いされないかしら?
いや、この男なら、そんなことにすら頭が回らないかも。
大丈夫よね…
「ねぇ…、リクシルって知ってる?」
美容師E氏(矢作兼)の心の声
確かに隣のこの子はかわいい。
リフレクなんとかのセラピストとかなんとか。
しかし、そんなことはどうだっていい。
どこの住んでようが、趣味がなんであろうが、一応いつだって
聞いてみるが興味はない。
接点を探し出して仲良くなる…わからない。
接点というのはこれからふたりで創り上げていくんじゃないか。
柄にもなく哲学的なことえを考えてしまった。
ま、つまり話の種なんてなんでもいいのだ。
なんかないか?
そう言えば、昨日の客がリクシルがどうとか言ってたな。
知ってるふりしたけど。
もちろん知らない。
そのあたり聞いてみようか。
話の流れはどうなるか…聞いてから考えよう。
「ねぇねぇ…、リクシルって知ってる?:」
セラピストF嬢(満島ひかり)の心の声
美容師のお兄さんとのリクシル話が、あんなに盛り上がるとは思わなかった。
ふたりともリクシルは知らなかったけど、きっと人生に関係ある何かだろうと
酔いながら結論を出した。
酔ってはいたけど連絡先の交換はしなかった。
そもそもタイプじゃないし…。
この奥さんはいつ見てもきれい。
上品だけど、派手ではなく、しっかりしているようで優しそう。
リクシルはこんな人にもなにか関係するんだろうか。
リクシルはこんな人の人生ですら動かせる何かなんだろうか。
この人の心を揺らすものってなんなの?
あぁ、この人の心を揺さぶってみたい…
「リクシルって知ってますか?」
主婦Gさん(木村多江)の心の声
私は夫を愛している。
…多分。
夫も私を愛している。
…多分。
けれど私は夫のすべてを知らない。
知ろうとしても知り得ないのもがある気がしますし、もしかしたら無意識に
知りたくない何かがsるのかもしれません。
それは、夫が私のすべてを知らないのと同じように…。
昼間行ったリフレクソロジーのスタッフの子…
リクシルってなんなんでしょうか。
私とリクシル?
夫とリクシル?
…私、揺れました。
久しぶりでした。
でもなんだかその時、不何とは裏腹に、ある種の心地良さがあったのも事実。
この生活を、あまりに平穏すぎるこの日々を、そのリクシルは変えてくれる
何かかもしれないと思ったのです。
リクシル…。
「ねぇあなた、リクシルって知ってる?」
夫B氏(堤真一)の心の声
妻に「リクシルって知ってる?」と聞かれて、とっさにはなんのことだか
わからなかった。
部長に聞かれたあのリクシル…
後輩に聞いても要領を得なかったあのリクシルの」ことではないか…
すぐにそう気づいたが、妻は私がリクシルを知っていると誤解した。
誤解された後の説明は、妻には弁解にしか聞こえない。
思えば今までずっとそうだった気がする。
私が必死に取ってきたコミュニケーションは、妻に取っては常に長々とした
言い訳だったのかもしれない。
私は、リクシルを知らない。
聞いたことはあるが、知りはしないのだ。
気まずい夜だった…。
朝、出勤前にテレビから聞こえてきた音声…
リクシル…
私は、思わず叫んだ。
「リクシル、リクシルだよ!」